好酸球性食道炎とは
好酸球性食道炎とは、食道の粘膜に「好酸球(こうさんきゅう)」と呼ばれる免疫細胞が異常に集まり、慢性的な炎症(アレルギー)を引き起こす病気です。
本来、食道は食べ物を胃へ送り込むための管ですが、何らかのアレルギー反応や免疫の異常によって炎症が続くと、食道の壁がむくんだり硬くなったりします。その結果、「食べ物がつかえる」「飲み込みにくい」といった症状が現れ、進行すると食道が狭くなってしまう(狭窄)こともあります。
好酸球とは?
白血球の一種で、本来は寄生虫や細菌から体を守る役割を持っています。しかし、好酸球性食道炎では、食物や花粉などのアレルゲンに過剰に反応して食道に集まってしまい、組織を傷つける原因となってしまいます。
発症の仕組みと特徴
炎症が起きるメカニズム
食べ物や空気中のアレルゲンが食道粘膜に触れると、免疫システムが過剰反応し、好酸球が動員されます。これらの細胞が放出する化学物質が粘膜を傷つけ、炎症やむくみを生じさせます。これが慢性化すると、食道は弾力性を失って硬くなり、食べ物の通り道が物理的に狭くなってしまいます。
逆流性食道炎との違い
症状は「胸やけ」や「つかえ感」など、逆流性食道炎と非常によく似ています。しかし、胃酸の逆流だけが原因ではなく、アレルギーや免疫異常が根本原因である点が大きく異なります。
内視鏡で見ると、食道に「縦のしわ」や「白い斑点」、「リング状の段差」が見られるのが特徴で、確定診断には組織採取(生検)が必要です。
主な症状
食べ物がつかえる・飲み込みにくい(嚥下障害)
最も典型的な症状です。食道の途中で食べ物が引っかかる感覚があります。特に肉類やパンなどの固形物で強く感じられ、「よく噛んで水で流し込まないと通らない」という状態になりがちです。
胸の違和感・痛み
炎症により食道の動きが悪くなることで、胸の中央に鈍い痛みや違和感を覚えます。食後や夜間に症状が強くなる傾向があります。
胸やけ・げっぷ
胃酸の逆流がなくても、炎症が食道の神経を過敏にさせるため、胸やけやげっぷを感じることがあります。
子どもの場合のサイン
小児では症状を言葉でうまく伝えられないため、行動にサインが現れます。「食事を嫌がる(拒食)」「よく吐く」「体重が増えない」といった様子が見られる場合は注意が必要です。
発症の原因
食物アレルギー
最も多い原因の一つです。牛乳、小麦、卵、大豆、ナッツ、魚介類などが引き金になることが多く、特定の食材を除去することで症状が改善するケースがあります。
環境アレルギー(花粉・ダニなど)
花粉の飛散シーズン(春や秋)に症状が悪化する患者様もいます。鼻や目だけでなく、食道にもアレルギー炎症が波及するためと考えられています。
遺伝的要因(アレルギー体質)
喘息やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などを持つ方に発症しやすいことから、遺伝的な体質も関与していると考えられています。
胃酸と免疫の複雑な関係
胃酸の逆流が軽度であっても、それによって粘膜のバリア機能が弱まり、そこからアレルゲンが侵入しやすくなるという「負の連鎖」が起きていると考えられています。
診断の流れ
診断には、似た症状を持つ他の病気(逆流性食道炎や感染症など)を除外する必要があります。
- 問診: つかえ感の有無、アレルギー歴(喘息やアトピーなど)を詳しく伺います。
- 内視鏡検査: 食道粘膜の「縦じわ」「白斑」「リング状の変化」などを観察します。
- 生検(組織検査): 粘膜の一部を採取し、顕微鏡で「好酸球が一定数以上増えているか」を確認して確定診断を行います。
治療方法
食事療法(原因食物の除去)
アレルギーの原因となっている食べ物を特定し、除去します。一時的に特定の食材(牛乳や小麦など)を絶ち、反応を見る試験的な除去食を行うこともあります。
薬物療法
- 胃酸分泌抑制薬(PPIなど): 胃酸を抑えるだけでなく、食道の炎症を抑える効果も期待して使用されます。
- ステロイド療法(局所・内服): 炎症が強い場合に使用します。喘息用のステロイド吸入薬を「飲み込む」ことで、食道に直接薬を作用させ、全身への副作用を抑えながら治療する方法が一般的です。
生活管理と再発予防
症状が改善しても、治療を止めると再発することがあります。定期的な内視鏡検査を受けるとともに、早食いを避ける、ストレスを溜めないなど、食道への負担を減らす生活が大切です。
