ピロリ菌外来

ピロリ菌とは

昔は強力な胃酸の存在する胃の中には、細菌は存在しないと考えられてきました。しかし1982年にオーストラリアの医師が胃内に生息する細菌を発見しました。その細菌こそがピロリ菌で、正式名称をヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)といいます。

ピロリ菌
ピロリ菌

胃がんの99%はピロリ菌が原因

ピロリ菌は胃の粘膜に感染し、慢性的な炎症を引き起こします。その状態を背景に、胃がん、委縮性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫などの消化器系の病気を発症させます。これまでは、胃がんは塩分の多い食事などの食生活が原因と考えられてきましたが、現在では胃がんはピロリ菌による感染症と言われています。

いつ、どのように感染するのか

ピロリ菌の感染は通常、幼少期(特に5歳以下)に起こるとされています。感染ルートは大きく2つあります。ひとつは上下水道が完備されていない環境での飲水を介して感染するケースです。特に現在よりも不衛生な環境で幼少期を過ごしていた50歳以上の人たちのピロリ菌の感染率は70%以上ともいわれます。もうひとつは家庭内感染です。親がピロリ菌に感染していて、食べ物の口移しなどで子供に感染させてしまうケースです。日本ではおよそ3,500万人がピロリ菌に感染しているといわれています。

除菌治療で胃がんを予防

ピロリ菌を除菌すると胃がんの発症を約3分の1にに減少させることがわかっています。また除菌治療は、慢性胃炎(委縮性胃炎)の程度が軽いほど、若い年齢のうちに行うほど胃がんの予防効果が高いこともわかっています。日本ヘリコバクター学会ではすべてのピロリ菌感染者に対して除菌治療を行うよう推奨しています。

除菌治療

ピロリ菌を除菌するには抗生物質を2種類、胃酸分泌抑制薬1種類の合計3種類の薬を1日2回、1週間内服します。これを1次除菌といいます。除菌が失敗に終わった場合は、抗生物質の種類を変えてさらに1週間内服します(2次除菌)。2次除菌まで行った場合の除菌成功率は97%ほどです。

先に胃カメラ、後にピロリ菌検査の順番

保険診療でピロリ菌の検査・除菌治療を行う場合は下記の条件に当てはまらなければなりません。

  1. 内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた方
  2. 胃MALTリンパ腫の方
  3. 特発性血小板減少性紫斑病の方
  4. 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の方
  5. 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた方

つまり、胃カメラ(胃内視鏡検査)によって胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断がなされた場合にピロリ菌検査・除菌治療は保険適用となります。胃カメラを受けない場合、あるいは胃カメラを受けても異常がなかったり、ポリープの診断では保険適用となりません。

ピロリ感染胃炎
ピロリ感染胃炎

胃カメラを受けずにピロリ菌検査をしたい方へ

ピロリ菌の検査や除菌治療は、胃カメラで胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の診断がついた場合に保険診療が可能となります。従って、胃カメラを受けずにピロリ菌の検査・除菌治療を保険診療で行うことはできません。
しかしながら、「胃カメラは受けたくないけれど、ピロリ菌の検査・除菌治療はしたい」というご希望も多くあります。当院では保険診療の適用とはならない方を対象に自費でのピロリ菌検査・除菌治療を行っております。

ピロリ菌検査は確実な診断を

ピロリ菌の感染検査・除菌判定検査においては確実な診断が重要ですので、偽陰性・偽陽性を出来る限り少なくする必要があります。
(偽陰性:ピロリ菌に感染しているにもかかわらず結果が「感染していない」と判断されてしまうこと。
偽陽性:ピロリ菌に感染していないのに結果が「感染している」と判断されてしまうこと。)
2種類の検査法を組み合わせることで、検査の精度をさらに高めることができます。

尿素呼気試験(検査結果:1週間後)

ピロリ菌に反応する薬を1錠を服用し、息を吐くだけでできる簡便な検査です。6時間食事をとっていないこと、その間の水分摂取はお水のみ(検査1時間前まで)の制限があります。
また、胃薬(注1)・抗生物質・ビスマス製剤を服用している場合は服薬終了後2週間以上経過していないと検査できません。
注1:タケキャブ ネキシウム パリエット タケプロン オメプラール オメプラゾン エソメプラゾール ラベプラゾール ランソプラゾール オメプラゾール ガストローム タケルダ キャブピリン
検査時間は20分です。胃カメラ検査後のピロリ菌検査は尿素呼気試験を行います。

尿素呼気試験

抗ピロリ抗体検査(検査結果:1週間後)

血清中のピロリ菌に対する抗体(抗ヘリコバクター・ピロリIgG抗体)を調べる血液検査です。
尿素呼気試験と違い、検査当日の食事・水分等の制限はありません。

血液検査

便中ピロリ抗原検査(検査結果:1週間後)

便中のピロリ抗原を調べる検査です。感度・特異度に優れた精度の高い検査法です。尿素呼気試験と違い、検査当日の食事・水分等の制限はありません。胃カメラ検査をしないピロリ菌検査、除菌薬服用後の除菌判定検査は便中ピロリ抗原検査を行います。

便中ピロリ抗原検査

内視鏡検査時に行うピロリ菌検査

迅速ウレアーゼ試験

内視鏡検査時に胃粘膜組織を採取し専用の試薬につけます。ピロリ菌が存在すると試薬が変色します。2時間ほどで判定できます。

迅速ウレアーゼ試験

組織鏡検法

内視鏡検査時に採取した胃粘膜組織を染色しピロリ菌の有無を調べる検査です。

培養法

採取した胃粘膜組織に存在するピロリ菌を培養して確認する検査です。結果判明まで2週間ほど必要です。

自費によるピロリ菌検査・除菌治療

料金(税込)

診察料 2,980円
①尿素呼気試験 5,980円
②便中ピロリ抗原検査 3,980円
③抗ピロリ抗体検査 3,480円
除菌治療薬 8,980円
ピロリ菌検査

診察料+①~③のうち一つまたは二つ

除菌治療

診察料+除菌治療薬

除菌判定

診察料+①または②または①+②

ピロリ菌外来 よくあるご質問

Q. ピロリ菌は悪い菌ですか。

A. ピロリ菌は胃粘膜に感染すると萎縮性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫の原因となります。特に胃がんの原因の99%はピロリ菌が原因と言われていますので、ピロリ菌は悪い菌と言えます。

Q. 1次除菌、2次除菌の成功率を教えてください。

A. おおまかに1次除菌の成功率は70%、2次除菌の成功率は90%ほどです。つまり100人中3人は2次除菌まで行っても除菌に失敗します。

Q. 2次除菌も失敗してしまったらどうなりますか。

A. 抗生剤を変更し3次除菌、4次除菌へと進みます。ただし、いずれも保険は適用されず自費診療となります。

Q. 除菌薬の副作用はありますか。

A. 軟便・下痢、味覚障害、口内炎、発疹、腹痛、便秘、肝機能障害などが出現する場合があります。症状が軽度であれば内服終了後に自然に軽快しますが、ひどい下痢・腹痛、血便などの症状が現れるような場合はご連絡ください。

Q. 除菌後に逆流性食道炎になると聞いたのですが。

A. 除菌後は胃酸分泌能が改善することにより胸やけなどの逆流性食道炎症状が出現する場合があります。症状は軽いものが多く治療が必要となるケースは少ないのですが、まれに重度の逆流性食道炎が発生する場合があります。

Q. 除菌後は胃が元気になりますか。

A. 除菌により胃粘膜の萎縮が改善すると、これまでより胃酸がよく分泌されるようになります。その結果、食欲が増したりすることがあります。

Q. ピロリ菌は除菌した方がいいですか。

A. 日本ヘリコバクター学会ではピロリ感染胃炎は全例除菌を推奨しています。除菌により胃がんの発生を抑制できることが明らかとなっておりますので、除菌治療をおすすめします。

Q. ピロリ菌除菌に成功しました。もう安心ですか。

A. ひとまず安心です。しかし、ピロリ菌感染によるリスクは除菌後も10数年は続きますので定期的に内視鏡検査を受けてください。

Q. 除菌後に再感染することはありませんか。

A. ほとんどありませんが、まれにあります。除菌後の再感染率は年間0.3%ほどです。

Q. ピロリ菌が陽性でした。胃カメラをした方がいいですか。

A. 胃粘膜の萎縮の有無・程度などを観察するためにも胃カメラ検査をおすすめします。

Q. ピロリ菌を除菌すれば胃がんにはなりませんか。

A. ピロリ菌除菌により胃がんの発生リスクは確実に減少します。しかし、胃がんを完全に予防することはできず、除菌後も10年以上は発生リスクがあるため、定期的な内視鏡検査を受けることをお勧めします。

Q. ピロリ菌が陰性だったのに今回陽性と診断されてしまいました。こんな事ってありますか。

A. ピロリ菌が再感染する率は年0.3%ほどといわれています。したがって、かなりまれではありますが、再感染により陰性であったピロリ菌検査が陽性になることはあります。ほかの理由としては、以前陰性だった結果が実は偽陰性だった場合です。偽陰性とは本当はピロリ菌に感染しているのに何らかの理由で結果が陰性と出てしまうことです。反対に偽陽性の場合もあります。偽陽性は偽陰性の逆で、ピロリ菌に感染していないのに結果が陽性と出てしまうことです。

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