胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
「潰瘍(かいよう)」とは、胃や十二指腸の粘膜がただれ、深くえぐれてしまった状態のことです。
表面が赤くなるだけの「胃炎」とは異なり、組織の深い部分(粘膜下層)まで傷ついているのが特徴です。
胃酸などの攻撃因子と、胃を守る防御因子のバランスが崩れることで発症しますが、現在は薬の進化により、手術をせずに治せる病気になっています。
症状のタイプと特徴
胃潰瘍と十二指腸潰瘍では、痛むタイミングに明確な違いがあります。
胃潰瘍(食後の痛み)
食事をすると胃酸の分泌が増えるため、食べてから少し時間が経った頃にみぞおちが痛み出します。重苦しい痛み、胃もたれ、吐き気、背中の痛みを感じることがあります。
十二指腸潰瘍(空腹時・夜間の痛み)
胃が空っぽの時に、酸が直接十二指腸の傷を刺激するため痛みます。食事をとると酸が中和されて痛みが治まるのが特徴です。深夜や早朝のみぞおちの痛み、空腹時のキリキリした痛みが典型的です。
危険なサイン(出血・穿孔)
潰瘍から出血すると、便が海苔の佃煮のように黒くなる「黒色便(タール便)」が出ます。また、潰瘍が深くなり穴が開く(穿孔)と、腹膜炎を起こして激しい痛みに襲われます。これらは緊急手術が必要な状態です。
潰瘍ができる3大原因
「ストレス」も原因の一つですが、現在では主な原因はピロリ菌と痛み止めであることが分かっています。
ピロリ菌感染(最大の原因)
ピロリ菌は胃に炎症を起こし、粘膜の防御機能を低下させます。その結果、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を起こしやすくなり、潰瘍患者さんの多くで感染が認められます。
痛み止めの薬(NSAIDs)
ロキソニンやアスピリンなどの「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」は、副作用として胃の粘膜を保護する成分を減らしてしまいます。腰痛や頭痛で痛み止めを常用している人は注意が必要です。
生活習慣・ストレス
喫煙、過度な飲酒、精神的なストレスは、胃の血流を悪くし、胃酸の分泌を過剰にするため、潰瘍の悪化や再発の要因になります。
検査と診断の流れ
バリウム検査では細かい潰瘍の状態が分からないため、内視鏡検査が基本です。
- 問診
痛むタイミング(食前か食後か)、痛み止めの服用歴、便の色などを確認します。 - 内視鏡検査(胃カメラ)
潰瘍の深さや出血の有無を直接確認します。また、見た目が潰瘍でも実は「胃がん」だったというケースもあるため、組織を採取して良性か悪性かを区別します。 - ピロリ菌検査
再発を防ぐために、ピロリ菌に感染しているかどうかを必ず調べます。
治療と再発予防
現在は優れた薬があるため、ほとんどの方は薬の服用で治癒します。
薬物療法
- 胃酸を抑える薬
プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などを服用し、強力に胃酸を抑えて傷の治りを助けます。通常、数週間の服用で改善します。
ピロリ菌の除菌
- 再発防止の切り札
ピロリ菌が陽性の場合、除菌治療を行うことで、潰瘍の再発率を劇的に下げることができます。
生活習慣の改善
- 禁煙・節酒
タバコは胃の血流を悪くし、治りを遅くします。治療中は禁煙が原則です。 - 食事の工夫
消化の良いものをよく噛んで食べましょう。香辛料、カフェイン、熱すぎるもの、冷たすぎるものは控えます。 - 痛み止めの見直し
痛み止めが原因の場合は、胃に優しい種類の薬に変更するか、胃薬を併用するなどの対策を医師と相談します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は「繰り返しやすい」病気です。症状が治まっても勝手に薬をやめず、医師の指示通りに治療を完遂することが大切です。
